こんにちは。himeshimaです。
コロナ禍で迎えた新年、家の中でテレビを見て過ごされた方が多いのではないでしょうか。
お正月のテレビ番組と言えば「芸能人格付けチェック」が毎年放送され好評なようです。この番組の中でオーディオに関するものが出題されることがあります。今年はヴァイオリン3本とチェロ1本を使った四重奏がありました。異なるグレードの楽器(ストラディバリウス等総額49億円 vs 初心者用総額106万円)を使い、同じ演奏者達による演奏を聞き分けるというものでしたが、私はこの問題に正解することができませんでした。オーディオを趣味としており、これまでそれなりにお金をかけてオーディオ機器を揃えてきた私にとって、これはとても悔しい結果です。しかし私が普段あまり聴かない楽器であることや、テレビの圧縮音声を通した判断ではわからなくても当然かなとも思います。言い訳でしかないですけど、、、。
しかし静かな試聴環境が整ったオーディオショップで比較試聴すると、確実に「自分好みの音」というものがあることに気づきます。アンプを例に挙げると、私の場合D級アンプのクッキリとした音は薄っぺらに感じることが多く、好きになれません。AB級アンプの厚みのある音が好きです。A級や真空管タイプのアンプは発熱がとても大きく、夏場の運用に困るので私は対象外としています。
さてアンプの話はこれぐらいにして、今回は私の趣味であるオーディオ、その中でもネットワークオーディオについて書きたいと思います。Linuxと強い関わりがありますよ。
2006年ぐらい
PS3 (SONY Play Station 3)が発売された頃だったと思います。私は自宅での音楽リスニング環境としてネットワークオーディオを導入しました。導入のきっかけとしては2つ理由があったと思います。
- 歴代のディスクメディア再生機器の故障を経験したことに加え、「ディスクの入れ替え行為」を面倒に感じていた。
- Linuxの知識を得られると同時に、便利で高音質なオーディオ環境を実現できるかもしれないという期待を持った。
サーバー用に玄人志向のKURO-BOX/PROというLinux組み立てキットを使い、Linuxの一種であるDebianを動作させました。
サーバーの役割
私が使っていた当時はPS3でのflacファイル再生はサポートされていませんでしたが、MP3等の非可逆圧縮ファイルは使いたくなかったため、サーバー側でflac⇒リニアPCMにtranscodeしたものをPS3に配信しました。しかし初期型PS3は発熱が大きく、ファンの動作音も大きかったためオーディオ用途に使っていたのは短い間だけでした。
2014年ぐらい
DSD(Direct Stream Digital)を含むハイレゾが話題になってきました。DSDを試したい衝動に駆られ、DSDダイレクト再生(=PCM変換しない)に対応するDAC(Digital to Analog Converter)を導入しました。PCとUSB接続したDAC経由でアンプへと音声が流れることになります。
最初はWindowsやMac上の再生ソフトを使っていましたが、汎用PCよりもヘッドレス(=グラフィックボードがない)のボードを使ったほうがノイズ発生源が減り、音質向上が図れるという話を聞き、PC EnginesというメーカーのAPU1C を試すことにしました(昔あったゲーム機ではありませんよ)。ヘッドレスなので、GUI(Graphical User Interface)は使用できず、CUI(Character User Interface)のみとなります。つまり環境構築は全てUARTやSSHで接続したターミナルからコマンド入力して行うことになります。ちなみに組み込み開発ではヘッドレスというのは珍しくありません。
私が購入したAPU1ボードは結構発熱するため、夏場はマメにシャットダウンしています。電源操作にはスマホ・タブレットのアプリを使います。起動はWake on LAN、シャットダウンはSSH接続したターミナルからコマンド投入します。コマンド投入と言っても履歴から選ぶだけなので手間ではありません。Linuxが稼働しているので、シャットダウンと起動の時間をスケジューリングすることも可能です。
〇私が使用しているLinuxボードの電源操作用アプリ
AndroidスマホとiPadどちらでも操作可能としています。
SSH Client
Wake on LAN (※iOSでは相性問題なのか正常動作しないアプリが多くありました)
使うsoftware(OSや再生ソフトの差異)によっても音は変わるという話を聞き、Voyage MPD ⇒ lightmpd ⇒ ArchLinux と試しました。
lightmpdはSDカードにOSイメージを書き込んで少しconfig設定するだけで使えるので初心者に優しいです。その代わりにカスタマイズ要素がほぼないので、いじり倒したい人には向いていません。
ArchLinux はコマンド体系が個性的で、しばらく使っていないとすぐに忘れてしまいます。pacmanコマンドって何よって言いたくなります。package-managerから来ている名前なのでしょうか?パッケージ管理コマンドであり、Ubuntuにおけるaptコマンド相当です。ArchLinuxはローリングリリース運用のせいか、数年放置後にアップデートするとOSが壊れてしまうことがあり、私はOS起動せずを2度経験してその都度環境構築をやり直しています。ArchLinuxを卒業すれば済む話かもしれませんが、代わりとなる候補を見つけていません。
2016年ぐらい
AVアンプを導入し、待望のマルチチャンネル音源を聴けるようになりました。マルチチャンネル音源としては、SACDやBlu-rayといったディスクメディアだけでなく、一部ダウンロード販売されているものもあります。私が使っているAVアンプ(SONY TA-DA5800ES)ではDSDのマルチチャンネル音源もネットワーク経由(DLNA)で再生可能です(DSDダイレクト再生ではなく、アンプ内部でのPCM変換再生となります)。DLNAサーバー側でSONY向けのDSD mimeタイプ(Multipurpose Internet Mail Extensions)の設定(dsfファイル解釈用にaudio/x-dsd)を追加してあげるだけでよいです。AVアンプ以外にも同じSONY製のUltra HDブルーレイプレーヤーであるUBP-X800にDSD配信可能なことを確認しています。
さらにサーバー側でBubbleUPnP を動かすことで、使い勝手のよいコントローラーアプリ(Linn KazooやLUMIN)を使用することができます。これにより選曲などの普段多用する操作は、スマホ・タブレットから行えるようになります。DLNAに対して残念な使用感の印象を持っている方は、これらのアプリを使ってみることをお勧めします。アルバムジャケットを眺めながら、選曲するのも楽しいですよ。
2021年 (現在)
AVアンプの導入で出会ったマルチチャンネルオーディオ。本当はこれを追求したいのですが、必要となる機材が高すぎます。DSD対応のマルチチャンネルDACのみで30万円以上します。PCとのインターフェースにUSBではなくethernetを使うMerging NADACは130万円です。いずれにしてもDAC単体にこのような高額な投資をする気になれず、マルチチャンネルオーディオの追求は一旦あきらめました。このような判断もあり、私のオーディオ環境ではAVアンプを使ったマルチチャンネル用構成は、AVアンプを使わないステレオ用構成と比べて明らかに音質が劣っていることを感じてしまいます。しかしそれぞれに良さがあるため、ステレオ・マルチチャンネル用の構成を1本化することができません。現在の機器構成(ネットワークオーディオ関連部のみ)を図示します。
ファイル音源が全て入っているHDDは、RAIDやネットワーク経由での定期的なバックアップを行っていません。音源追加時に別のHDDにもデータコピーしておき、故障時にはリプレース可能としています。今や大容量のHDDでも安いですからね。
終わりに
ネットワークオーディオ用のネットワークをインターネット用のネットワークと分離させることで、余計なトラフィックが減り音質向上が図れるという話を聞いたことがあります。(例:lightMPD/upnpgw)これは高額な投資を必要としないので、機会をみて試したいと思います。ラズベリーパイ等の一部のシングルボードコンピュータで使用可能なI2Sを使ったDACにも興味があります。
高級なオーディオ機器を入れ替えることは難しいですが、Linuxボードを使ったDIYオーディオは気軽に試すことができるのがよいですね。DIYオーディオを活用したネットワークオーディオの実践には手間がかかり、Linuxやネットワークの知識もある程度必要となります。しかしだからこそ、この辺りの知識を得たい人にとってはうってつけの題材だと思います。ぜひトライしてみて下さい。自身の強いモチベーションがあれば物事の習得は苦労しても達成できますよ。ただし、”オーディオ沼”にハマってしまわないように気をつけて下さいね。(自戒を込めて。。。)