素粒子研究からエンジニアへ

  • 2020年12月4日
  • 2020年12月5日
  • shiro

こんにちは、shiroです。
今回のブログでは、私がエンジニアになるまでの話をしたいと思います。

エンジニアになる前はニュートリノの解析を行っておりました。
今回はニュートリノとその解析について簡単に説明していきます。

【目次】
1. ニュートリノ
2. 研究について
3. 解析ツールについて
4. エンジニアへ

1.ニュートリノ
 エンジニアになる前は、液体シンチレータ検出器を使用してニュートリノという素粒子の実験を行っていました。
ニュートリノといえば、2015年に梶田さんがスーパーカミオカンデの水チェレンコフ検出器で"ニュートリノ振動"と呼ばれる現象を初めて観測することによって、ノーベル物理学賞を受賞したことが当時話題になりました。
 ニュートリノとは、素粒子(物質の最小単位の粒子)の一種でいまだにその性質は完全に分かっていません。その中でも私が行っていた研究はニュートリノの性質を解明する実験ではなく、低エネルギーのニュートリノを使用して地球内部の熱源を3次元的に解明しようというものでした。
ニュートリノの高い透過性を利用して、不可視の観測対象(地球内部の熱量)を透視しようという試みになります。

2.研究について
 これまで行った研究内容としては2通りで、既に存在しているカムランドと呼ばれる1ktの液体シンチレータによって地球内部や原子炉から飛来してくるニュートリノの解析、もう一つは飛来してくるニュートリノの到来方向を検出するための新しい液体シンチレータ検出器の開発です。
地球内部から飛来してくる低エネルギーのニュートリノに関しては到来方向を測定する技術が現状無く、開発に成功すれば地球ダイナミクスの謎の解明への手がかりとなる研究でした。
新しい液体シンチレータ検出器の開発では、100種類以上の界面活性剤をひたすら調合したり、素粒子反応と光学系を組み合わせたシミュレーションなどを行っていました。

3.解析ツールについて
 ニュートリノの解析にはC++を使用しており、解析結果のヒストグラムを描画するツールとして、"ROOT"と呼ばれるCERNによって開発が行われているデータ解析ツールを使用していました。昔はFORTRANが主流だったようですが、実験が大規模化するにつれC++を用いたデータ解析環境が求められるようになったようです。
 また、物質中の粒子の飛跡をシミュレーションするためのツールとして、"Geant4(GEometry ANd Tracking)"と呼ばれるモンテカルロシミュレーションを行うツール、到来方向検出のためにニュートリノの発光点を検出するために、光学系の開発もなされており、光学系のシミュレーションにZemax社の光学設計ソフトも使用していました。

4.エンジニアへ
 研究の性質上、物理学と地学や液体シンチレータの開発では化学など様々な分野が絡み合う中で研究を行っていましたが、現状では技術的な課題が多く将来性を疑問視していました。それから急激に発展している、ITエンジニアの世界に興味を持ちエンジニアになりました。

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