こんにちは。ZMSのhimeshimaです。
「皆さん、ハンダ付けやってますか?」
ソフトウェア寄りの開発者でやっている人は少ないかもしれませんね。しかし組み込み開発では必要となることが結構あります。というわけで今回は、私にとっての ”ハンダ付けとの関わり” について書きたいと思います。
苦手意識が生まれるまで
私は組み込みソフト開発を長年やってきました。制御屋(組み込みソフト開発者)ということで、SWDからのファームウェアの書き込みや、UART・I2C・SPIといった通信ラインを使用&デバッグすることがあり、線出し(ハンダ付け)が必要となります。最初からアクセスできるようになっている状態で開発ボードを受け取る場合もありますが、私の経験してきた現場ではそうでないケースも多かったです。開発人員が潤沢にいる大手メーカーでは電気屋(ハードウェア開発者)にお願いしてやってもらえることもありましたが、お願いできる人がいない場合もあります。ブレッドボードを活用することでハンダ付けが必要なケースを減らすことはできますが、それでも自分でやれる方が役に立つことが多いのではないでしょうか。
私は7年以上ハンダ付け作業を経験していますが、残念ながらあまり得意ではありません。業務で行うハンダ付け作業は私にとって難易度高めのものが多く、ハンダ付け失敗から開発ボードをダメにした苦い経験が何度かあります。そのためなかなか上達できずに、”ハンダ付け ⇒ 苦手 ⇒ あまりやりたくない” というマイナス印象をこれまで持ち続けてきました。
私のハンダ付けレベル
- ステップ1:標準ピッチ(2.54mm)
標準的なブレッドボードのピン間隔であり、肉眼での確認のみで成功します。このレベルで失敗することはまずないです。
- ステップ2:ハーフピッチ(1.27mm)
名前の通り、標準ピッチの半分しか間隔がありません。私にとっては実体顕微鏡を使ってなんとかやれるといった感触です。これ以下の狭いピッチ(1mm未満)等のハンダ付けが困難な条件になると、私の手には負えないと認識しています。上級者になると髪の毛1本ほどのエナメル線を使ってチップの足から線出ししてたりしますが、、、。
今回、ほぼハーフピッチ(1.25mm)のハンダ付けが必要となり、対処方法を考えました。
方法1.ハンダ付けが得意な人にお願いする
方法2.自分でなんとかする
私は「方法2」を選びました。苦手なハンダ付け作業を克服することが今後のためにも必要だと考えたからです。と言っても対象が高価なボードや入手が難しい(or 入手に時間がかかる)ものだった場合には失敗するわけにいかないので「方法1」を選びます。状況に応じて判断することが必要なのは明らかですね。では具体的な対処をどうするのか。今回は自宅での作業になり、はんだごて以外に使えそうな機材はありません。しかしこれまでの経験上、私のスキルでは肉眼に頼るだけでやるのは無謀。そう判断し、デジタル顕微鏡を購入することにしました。
ハンダ付けでよく使われる2つの顕微鏡
- 実体顕微鏡 (stereo microscope)
光学顕微鏡の一種で、低倍~中倍率(2~30倍程度)の観察に用いられます。双眼鏡と同じく接眼レンズを覗いて観察します。
- デジタル顕微鏡 (digital microscope)
デジタルカメラを搭載した顕微鏡で、モニターに出力して観察します。実物は ↓ の写真をご覧ください。
デジタル顕微鏡の使用
私が購入したものは、Andonstar AD207 というもので、1.4万円でした。
もっと安いものもありましたが比較検討した結果、以下のポイントに価値を見出し決めた次第です。
・7インチモニター
・明るさ調整とフレキシブルな向き調整が可能な補助LED照明つき
・カメラの高さと角度(カメラ&モニター)の調整が可能
・世界中に購入者がいて、低い評価のものが少ない
作りのあまい点(日時設定後、1度本体ボタンから電源オフしないと日時保持されない)があるものの、効果は絶大でした。これまで実体顕微鏡を使った経験はありますが、接眼レンズを覗きながらのハンダ付け作業には窮屈でやりにくさを感じていました(※あくまでも個人的な印象です)。ところがデジタル顕微鏡ではその窮屈さがなくなり、対象物をはっきりと十分に拡大されたサイズで見ることができます。ハンダ付け時にはモニターを見たまま手元を動かします。ハンダ付け対象物と線材、ハンダごての位置確認のためモニターではなく物体を直接見ることがありますが、モニターが近くにあるため目線の移動は負担になりません。ハンダ付けの成功・失敗がモニター映像を通してわかることが多く、テスターを使った導通確認は最小限で済みます。この時、私の中で ”苦手なハンダ付け作業” が辛いものではなくなったことに気づきました。
今回、”物体を正確に見ることができれば、手元の操作は精度を高められる” ことを実感したことで、ハンダ付け作業を前向きに行うことができました。上級者への道のりはまだまだ遠いですが、これからは恐れることなくハンダ付け作業に取り組み、スキルを高めていこうと思います。